ヴァンサン・カッセル主演ジャック・メスリーヌ
「Part1ノワール編」「Part2ルージュ編」同時上映
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インタビュー

ジャン=フランソワ・リシェ監督 インタビュー
「反逆者でありロマンチストでもあるメスリーヌの光と影を包み隠さず見せようとしたんだ」
この作品を監督する以前に、あなたにとってジャック・メスリーヌはどういう存在でしたか?
──自由な人間。彼は夢に生き、それを最後まで貫いた。元々中流家庭の生まれだったが、逸脱した生き方をした。ギャングの世界に導かれたのは、決定的な要因があったからではなく、自ら選択したんだ。彼の生き方の根底には拒絶があった。そしてノーというのは自由でも、それを実行する生きざまは厳しいものになる。

なぜ彼は偶像化されたのでしょうか?
──彼は型にはまらないタイプで、メディアを操り、逆にメディアに操られ伝説になった。彼を評価していた人にとってはロビンフッドのようであったし、糾弾する人に言わせればただの暗殺者だった。〈千の顔を持つ男〉と呼ばれた彼は、風貌同様、人格も多様で、そこに人々は興味を持つのだろう。

メスリーヌの人物像とは?
──警察や権力に対する挑発者であり、法に対して反逆者だった。そして何よりロマンチストでもあった。ジャンヌに宛てた手紙は、まるで恋する16才の青年が書いたかのようにナイーブだ。気前がよく、女性たちに最高の夢を見せてあげたんだ。
まるで映画にするにはぴったりの人物ですね。
──彼は自分の生きざまが映画に描かれることをきっと望んだことだろう。映画で見たようなギャングの理想を実践し、誇り高く、友情に厚い男を演じた。その一方で、犯罪行為にロマンティズムがないことを悟っていたとも思う。

なぜ2部作になったのですか?
──Part1のラストでジャック・メスリーヌのイノセントな時代は終焉する。Part2が始まると、彼はもう〈社会の敵No.1〉として生き延び、伝説を増殖させている。メディアに頻繁に登場する人物であり、人々をその主義主張で惹き付けている。フランスではノーという人間が好まれるものだ。フランスはたとえばフランス革命、パリ・コミューン、68年の五月革命といったように闘争によって成り立っている国だ。メスリーヌは一種のアナーキストで、反体制派でもある。枠にはまりきらない人間の矛盾を2部作で描こうとしたんだ。
メスリーヌの事実と向き合ってどうでしたか?
──事実があまりに強烈だったので、実際に出来事が起こった場所で撮影しようと試みた。それでも誰もメスリーヌのような人間の複雑な人生を、これだ、と決めつけることはできないだろうと感じたね。

ヴァンサン・カッセルのキャスティングは不可欠でしたか?
──彼でなかったら私はこの映画を撮らなかっただろう。彼は身体的にメスリーヌそのものだった。彼にはジャック・メスリーヌの全てが宿っていた。Part1のはじめからPart2の最後に至るまで、彼の体重増加による変化以上のものがある。本能的であり、身体的な、すばらしい俳優だ。15年以上前から彼を知っているが、撮影が終わるまでに、私がそれまで知っていたヴァンサンを忘れさせてしまうほどだった。
ヴァンサン・カッセル インタビュー
「9ヶ月もの撮影のおかげでメスリーヌ役をじっくりと自分のものにできたよ」
トマ・ラングマンにメスリーヌ役をオファーされた時、どう答えたんですか?
──いつもだったら即座にOKするところだが、最初の脚本は善悪二元論になりすぎていた。ヒーローとは言えないような人物でも、面白く見せるためにヒーローらしい演技をしなければならなくなるだろう。だからこの段階では手を引くべきだと思った。少し経ってこちらからトマに声をかけ、全く新しいチームで企画をスタートさせるなら待っているよと告げた。そのうちトマは監督としてジャン=フランソワ・リシェ、脚本家にアブデル・ラウフ・ダフリを考えていると言った。そしてメスリーヌの矛盾した人物像をすべて明らかにするように2部構成にしたいと口説かれて、出演することを決めたんだ。
2作ともまったく異なる映画になっていますね。
──50、60年代は70年代とは時代背景がまったく違う。車、ファッション、音楽、何より精神性が違うんだ。2本の映画はお互いを補充し合う2つのテーマを展開している。Part1は、若者がアイデンティティ探しをしてそれを見出す物語だとすると、Part2は自分が選んだ人生がどこへ向かって進むのかを知りながら、それでも突っ走ってしまう男の話だ。Part1はフィルム・ノワール、Part2は心理サスペンスと言えるだろう。結末を予測できるほど勘が鋭い男のある種のパラノイアを描いている。

撮影はどうでしたか?
──これまで経験した中で最も長い撮影だった。9か月間ぶっ通し。まるでマラソンだったよ!最初のうち、息切れしないだろうか、最後まで同じテンションでやり遂げられるかが心配だった。でも撮影が長くかかったおかげで、じっくりとメスリーヌ役を自分のものにする時間が持てた。彼の人生は短い間に実に多くのことが起こったわけだから、それを演じる私には一秒たりとも息をつくヒマがなかったんだ。
20kgも体重を増やしたそうですね。
──体重を増加することでこれまでの自分の演技方法がどこまで変わるのか見当もつかなかったよ。20kgも太ったら同じ演技どころか、動き方ひとつ、呼吸や話し方だって同じにはならない。見かけだけでなく声の質も変わってしまう。4ヶ月かけて体重を増やし、撮影中の9ヶ月の間に徐々に減らしていったんだ。撮影はPart2を先に撮影しているが、というのは撮影のストレスで痩せてしまうほうが多いから。人生でこれほど重量のアップダウンを経験したのは初めてだよ!

見事な共演者たちが揃いましたね。
──長い撮影の間に2、3日しか撮影休日はなかったけれど、幸い新しい出演者たちが次々と現場に登場してはまったく異なるエネルギーを注入してくれた。違う相手に向きあえば同じ演技をすることもなくなるだろう。そしてメスリーヌもまた、彼と行動を共にした人々に応じて、常に変化していったと思う。